情弱な社会環境に対峙する決意

新年あけましておめでとうございます

今年は、私自身還暦という人生の節目を迎えます。昔は、還暦というと爺さんのイメージでしたが、いざ自分がその立場になると、まだ人生の折り返し点、やり残したことがあると感じている。これまでの経験、ノウハウを、今後は、何らかの形で社会にお返しをすることに費やす時間と認識を新たにしております。

昨年、一昨年の約2年間、世界はコロナ禍という、インフォデミックを経験し、未だ抜けきれないでおります。

PCR検査には偽陰性と偽陽性が存在する、それは感度と特異度という精度が100%でないからだ。小学生でもできる計算を行えば、検査で決して安心が得られる訳では無いのだが、いつの間にか人は安心を求め、検査に走り出している。

そして発熱しているにもかかわらず、検査で陰性と判定された後に安心して社会活動を始めるという例がまだ散見される様だ。あれだけ社会事例で、発熱後の検査で陰性とされた後に感染させる、クラスターを発生させた例が報告されているにも関わらず、いざ自分の事になると、検査で安心してしまう。

その個人は、悪気がある訳ではない。日本語が理解できない訳でも無く、知能が低い訳でも無い。しかし、人は安心を求め、誤った行動をとってしまう、弱い生き物なのだ。私は、それを『性弱説』で説明されると考えている。

許せないのは、人の弱みに付け込み、危機を煽り、時には自身のビジネス上の利益の為に人に不安感を抱かせる行為を公共の電波を使って垂れ流すことだ。あたかも、正義を気どり、多様性と言いながら、異論を許さない。人権問題を主張しながら、人権を侵害する行為を拡大する。最近の報道姿勢は目に余る状況であり、何か勘違いしているとしか思えない。

この様な社会環境で、弱い人間を支えるのは、自己防衛でしかない。そのためには、それを支える正しい情報が必要であり、情報を読み解く論理的分析力を鍛える必要があると確信している。企業においてはリスク管理であったり、危機管理、セキュリティ管理の領域を充実し、従業員の健全活動が活動を支える環境の構築が重要になるだろう。

私の残りの人生、微力ながら、所謂『情弱』な状態に陥らない為の個を育成し、企業環境構築に貢献できれば幸いと考えているので、引き続きご支援の程よろしくお願いいたします。

セキュリティを守る『組織風土』

 組織の構成員がモチベーションを高く保てない状態では、その組織は良い結果が出せないだろうし、一時的に無理して出していくと、その歪は大きな危機的現象を生みかねない。
 最も軽い現象は、組織員の脱退、会社なら退職。何らかの事由で、それも困難な場合、組織内犯罪、内部犯行、ハラスメントと組織の腐敗に向かって一直線に進んで行くだろう。

 セキュリティ・マネジメントの世界で、昨今強く言われるのが、組織内犯行を防止、組織員を疑う、いわゆる『性悪説』による対策の推進がある。しかし、はっきり申し上げるが、『性悪説』を究極に追及する体制において、実はセキュリティは守れないという矛盾が発生する。セキュリティの世界、いたちごっこであり、攻撃と守りは常に進歩しており、終着点は無い。
 組織内において、『性悪説』を基に、何もできない様に雁字搦めの状態では、仕事は出来ず、それが不必要で無意味に厳しい場合、モチベーションの低下とともに、つい出来心を起こさせてしまう環境となる。バランスが必要なのだ。
 簡単に言えば、『性悪説』の究極の対応は、人に何もさせないこと、なのだ。何もさせなければ、何も悪いことはできない、間違いも起きようがない、しかし、何も価値も生み出せないだけである。

 だからといって、セキュリティ度外視、ゆるゆるの状態では、これからの時代、サイバーセキュリティや情報セキュリティは他人事ではなく、明らかに攻撃の手段は高度化している。また、社会的風潮も、セキュリティ面での不正が発生した場合の社会的制裁は厳しく、機密情報漏洩や個人情報漏洩などが発生した場合、経営は危機管理状態に陥ることは間違いない。
 危機管理対応として最も重要視されるのが説明責任だが、発生した事象が何が原因でどうなったのか、その問題点は何で、どう再発防止策を採るのか、明確にかつスピーディーに説明する必要がある。
 この説明責任を確実に果たせれば、逆に信頼を勝ち取ることにもつながるが、説明できないと最悪の事態に突入だろう。ゼロリスクは、あり得ないので、インシデントを100%防ぐことは出来ない。如何にマネジメントできるかが重要であり、説明することで、そこまで対策していたのなら致し方ない、と思ってもらえる要点が『性悪説』を前提にした対策なのである。

 では、セキュリティインシデントを防ぐには、どうすれば良いか。『性悪説』対策でダメなら、何があるのか。

それは、断言しよう、『組織風土』なのだ。

 組織の内部犯行事例をその真因を追求し、考察を続けて行き当たる、答えが『組織風土』である。テレビドラマの様に、悪意を持って犯行に及ぶケースというのは、実はレアケースである。その犯行に対して失うものと、得るものを天秤にかけると到底釣り合いが取れないからだ。もちろん、米国ペンタゴンなど国家機密を取り扱う場合は、一発勝負、天秤は釣り合うかもしれない。しかし、それは一般のレベルではない。
 では、なぜ内部犯行が起きるか。それは、その組織内で、立場や居場所がなくなり、追い込まれ、已むに已まれず、つい犯行に及ぶ。それは、『組織風土』が病むことで、中にいる組織構成員が悪意を持った結果ではなく、負けてしまった結果なのである。人は弱いもの、これを『性弱説』と言う。

 つまり、これからのセキュリティ・マネジメントに求められるのは、発生しうるリスクに対して、説明責任を果たせる対策を実行し、真の意味で事故を発生させない、鉄壁の『組織風土』を構築することに他ならない。

 この『組織風土』を健全に保つために、構成人員のモチベーションの総和を高く維持する必要がある。この場合のモチベーションを測る方法として、モチベーションタイプやマズローの欲求モデルよりも、ハーズバーグの動機付け・衛生理論分析が適切だ。

 ハーズバーグの動機付け・衛生理論は、モチベーションの要素をプラス要因の動機付け要因と、マイナス要因の衛生要因に別けて考える。動機付け要因としては、『達成』『承認』『仕事そのもの』『責任』『昇進』『成長』に分類、衛生要因は、『会社の方針と管理』『監督』『監督者との関係』『労働条件』『給与』『同僚との関係』『個人生活』に分類する。
 各構成員に、アンケートするなどして、この分類ごとのスコアリングを行い、『組織風土』面の問題を洗い出し、対策を打つべき課題をあぶり出す。
 簡単なアンケートで、かなりのレベルのスコアリングがはじき出せるので、対策前と後の変化を見ることでKPIともなり得るのだ。

最後に繰り返しになるが、組織の弱さの順は
① 悪いことをやれてしまい、ついやってしまう組織
② 悪いことをやりたくても、やれない組織
③ 悪いことはやれてしまうが、やらない組織
④ 悪いことはやれないし、やらない組織
なのである。