東京大学論文(GoToと感染の関係性)の考察検証

 東京大学の論文(GoToと感染リスクの関係性調査)が公開された。査読前だが、緊急性が高いと言う趣旨での公開になる。メディア、専門家、野党議員は挙って、結論として『GoToは感染リスク高い』が研究結果だと伝えている。同時に論文内記載の限界点も伝えてはいるが、充分伝わる言い方には思えないので、一般社会では誤解が広まっている様に感じる。
 従って、詳細の確認が緊急に必要と感じたので、通読してみた。結果、誤謬性の高い部分が存在したので下記に示す。確かに統計データ処理にはかなり気を使って精度向上しているが、データを元にした考察では、結論ありきの感が否めない。査読では、良識的な指摘が為されることが想定できる。

① a.GoToトラベル利用経験(過去1~2か月)とb.過去1か月以内の症状経験の関連を問うには、a.b.の時系列が明確である必要があるが、時系列は明確でないので関係性を問えない。


② 有症率の差をGoToトラベル利用の影響とした場合、GoToトラベルの母集団にも差分と同様の発生確率での有症状者が発生する必要がある。11/15までに5260万人泊の利用が報告されており、1人平均2回利用と割り引いて考えても、2500万人規模の母数に対して、1%の25万人規模の有症状感染者が通常より多く検出されて然るべきであるが、現実の感染者数規模は異なる状況である。


③ GoToトラベル利用者の内、高齢者の方が感染リスクを恐れているため、慎重に行動してリスクを増加させていなかったという考察は、即ち、非高齢者でも慎重な行動を実施さえすればGoToトラベルは感染リスクを増加させないとの考察にもなる。即ち、GoToトラベル中止による移動制限よりも、感染予防に対する慎重な行動の方が感染抑止に効果がある事になる。


④ 一方で、高齢者が慎重な行動をすると言う考察は根拠のない印象情報である。実際、GoToトラベル利用時の高齢者の行動は、むしろ感染抑止の認識が薄い印象すらある。それは日常行動においても同様に確認される。(但し、統計的に論ずるデータは存在しない)


⑤ 高齢者と基礎疾患のある人をGoToトラベルの対象外とする目的は、感染拡大のコントロールではなく、感染した場合の重症化リスクの高さを考慮し、直接感染機会の低下を目的としており、施策が有効でない理由にはならない。


⑥ 記憶による症状の自己申告と新型コロナ感染を直接関係性を持たせている論理に無理があり、そのことでGoToトラベル事業が感染拡大に一定の影響がある可能性があると論ずるのは飛躍し過ぎである。


⑦ 査読前にこの結論を公開することで各種メディアが結論を伝え、一般国民に不確かな部分が充分に伝わらず、飛躍した結論だけが伝わっていく現象は、フェイクニュースの類を免れず、後から誤謬性が報告されても、一旦広まった印象が消えないのが一般社会であり、査読前の公開は影響力の大きさを考えると慎重であるべきだった。


⑧ 感染リスクの高い人の定義が、感染抑止行動の甘い人、慎重な行動を心がけない人であれば、感染リスクが高い人がGoToトラベルを利用する傾向が強いと言う論理は一定の理解が出来る。しかし、その感染抑止行動の甘い人、慎重な行動を心がけない人は、例えGoToトラベルを利用しなくても、日常の行動にて同様の感染リスクを有するのであり、GoToトラベルを感染リスクの要因と論ずることは出来ない。


⑨ 全体的に結論ありきでの論理展開の印象が拭えず、このデータからGoToトラベル事業の是非を論ずるのは無理がある。


⑩ 但し、感染抑止行動、慎重な行動が感染抑止に効果があるとの論旨は理解できるものであり、感染抑止行動としての会食時含めてのマスク着用や3密回避、ソーシャルディスタンス、手洗いうがい等の重要性を改めて示す結論には導くことが出来る。

東京五輪_全力応援宣言

 自国開催の東京五輪。ここを目指すアスリートは選手生活の全てをかけて、いや人生をかけて、様々な困難を乗り越えて臨もうとしている。そして、その競技姿勢を通じて我々に感動と元気を運んでくれる。であるならば、コロナ禍であろうとも、いやコロナ禍だからこそ、全力で東京五輪を目指すアスリートを全力応援しませんか。

 様々なネガティブ情報も多いのは事実だろうが、それを乗り越えて挑戦する人達を、ネガティブな『Noの論理』ではなく、どうすれば出来るのかというポジティブな『Yesの発想』で応援しませんか。

 いまだ中止を叫ぶ声も多い。その殆どは、リスクを語るが、様々な種目、プロスポーツにおいても、どうやれば安全に開催できるか、真剣に考え、トライアンドエラーが行われている。その結果、現時点でもリスク低減策はかなりのレベルで積み上げてきている。
 応援できなくとも、ネガティブな発信で、挑戦する前向きな人達の妨げになる事だけは、避けるべきと思って頂けませんか。

 個々に考え方も異なるだろうし、国民全員賛同して欲しいとは言わない。しかし、認識して欲しいのは、『中止すべき』という声が大きくなると、少なからず東京五輪を目指すアスリートの活動に負の影響が及んでしまうことだ。
 確固たる信念を持って『中止すべき』との発信をされるなら仕方がない、それはそれで意見として尊重しなければならないだろう。しかし、空気感、感覚論で『中止すべきだと思う』のであれば、是非発想の転換をして『感染リスクを最小化出来るのであれば開催できる』とポジティブな考えを少しでも持って頂けないだろうか。

 個々のアスリートは、感染抑止行動という通常の活動にプラスαした対応を余儀なくされ、苦難に挑み、乗り越えている。それらアスリートの支援のために、感染抑止対策も工夫されレベルアップしているし、これからも新たな策がどんどん追加されていくだろう。
 であれば、出来るだけポジティブな意見を応援メッセージとして発信して頂きたいし、出来なくても、確固たる意思の裏付け無く『中止すべき』という発信は控えてもらえないだろうか。マイナスが減少するだけでも、アスリート一人一人には大きな力になる。

 これは切実な願いである。多くのアスリート達の為、少しでもポジティブに『Yesの発想』で『どうすれば出来るか』『どうすれば安心出来るか』の考えで、応援をしませんか。

<政治家の皆さんへ>
東京五輪を政争の具とするのはもうやめて下さい。政治的国家イベントである事も間違いありませんが、今一度、個々のアスリートに目線を合わせて下さい。野党の皆さん、政権与党を攻撃する格好のネタかもしれませんが、しばらく攻撃は控えて頂けないでしょうか。いやむしろ積極的に政府と連携して開催に向けて全力でご尽力頂けないでしょうか。結果として開催出来れば、皆さんの政治成果となることは間違いないでしょうから。

<マスコミ、メディアの皆さんへ>
ネガティブな情報発信、政府監視の役割も重要でしょうが、東京五輪に向けては全力応援の姿勢を前面に出して頂けないでしょうか。人類の英知を結集した感染抑止を施し、ポジティブな大会にするためには、皆さんの情報発信が極めて重要です。むしろ、メディアの発信が前向きになれば、様々なイノベーションに繋がります。『ここまで対策は考えられている』『もっとこういうことが出来るのではないか』という情報発信を強めて頂ければ、一般国民の意識も前に向き、対応策も確実にレベルアップし、前進できます。国民を前に向かせイノベーションを生み出すのも、後ろに向かせるのも皆さん次第だと言っても過言ではありません。

 先日の体操内村選手のコメントを真正面から受け止めませんか。多くのアスリートが同様の感情を持ち、発信を憚っていた内容、勇気を持っての発信、問題提起です。『できない、ではなく、どうやったらできるのか』『どうか、できないと思わないで欲しい』です。

残念ながら、その後の調査でもネガティブな意見が多いのが現実です。

 過去に自身の責によらずチャンスを奪われた選手として、マラソンの瀬古選手や柔道の山下選手が語られる。彼らは、金メダル確実と言われた選手だったが、同様にチャンスを奪われた。しかし、実際にチャンスを奪われ、人生が狂わされたアスリートは代表以外も含めて大勢埋もれており、その何十倍、何百倍も存在する。

彼らに、歴史の不幸な繰り返しを経験させないで欲しい。

 どうやったらできるのか、それを追求して達成できた時に、得られる成果は有形無形で計り知れない。できない、と思った瞬間に前に進むことが出来なくなる。負のエネルギーは、前を向いて、障害を乗り越え、前進している正のエネルギーにも負の影響が生じる。

 このメッセージは、極めて感情論として、感情的に発信している。その理由は、世の中の『できない』『中止すべき』との声の多くは極めて感情論だと思っているからだ。

 論理的にリスクマネジメント観点で語る事、状況を統計的かつ客観的に分析する事は可能であり、前向きな情報として発信することも出来る。しかし、それだけでは社会の感情的なパワーには届かない。マイナスパワーの方が多いのが論理的であれば仕方がないが、極めて感情的であり、論理だけでは押し戻せない。

 東京五輪は開催して欲しいし、開催するべきと信じている。代表選手だけでなく、選に漏れた選手も含めて多くのアスリートの人生を支え、チャレンジする価値を高めてくれる。その姿を見ることで、多くの人は正のエネルギーを得ることが出来る。その結果が社会に還元される効果が大きいからだ。

鳥肌が立つレース連発の陸上日本選手権

 12月4日金曜日、大阪のヤンマースタジアム長居で鳥肌の立つレースが連発した。

 女子5000m決勝レースでオリンピック参加標準記録をクリアしている田中希実、廣中璃梨佳は優勝すれば即オリンピック代表内定。タイム的にはクリアしているが、除外期間(新型コロナの為公平性を保つ処置で2020年4月6日から11月30日が対象除外)の記録の為クリアしていないが実力はある萩谷楓の戦いと予測されていた。
 その中でも、先日の中距離レースにて、積水化学卜部さんに圧勝、800m、1500mで日本新記録の田中希実選手がどんな強いレースを見せるか、先日の実業団駅伝で1区独走の区間賞をマークした廣中璃梨佳選手がどこまで食い下がるか、楽しみなレースだった。

 序盤2000mまではスローで展開したが、そこから廣中選手がペースアップ、1周72秒を切るペース、3人の勝負に絞られ、3000m過ぎで2人に絞られる展開。後半更に切り替え、ラスト1周の鐘が鳴っても先頭廣中選手、直後の田中選手は変わらず、ラップは67秒の声。凄まじいペースでバックストレート直線に入り、田中選手が廣中選手を交わす。第3コーナーから突き放し、田中選手が強いレース、負けないレースを見せてくれた。中距離種目でスピード強化を行った成果がラストで活きた結果だろう。

 次に女子10000m決勝。新谷選手がオリンピック代表と共に日本記録に挑む。序盤、積水化学の佐藤選手がペースを作る展開。リズムに乗った新谷選手がそこから、1周71秒とキロ3分を切るペースに上げる。マラソン代表の一山選手が途中まで追走するが、直ぐに新谷選手の一人旅に。流石にキロ3分切りのペースは継続できなかったが、1周73~74秒までで踏ん張り通す。5000m手前で既に周回し始める。日本選手権に出場する選手を半分手前で周回するなどトンデモナイことだ。7000m過ぎのあたりで少し足が鈍った様にも一瞬見えたが、周回遅れの集団をバックストレートで抜かす際に、上手くペースを上げリズムを立て直した様子。2番手は、一山選手、3番手グループに日本郵政の鍋島選手や序盤引っ張った佐藤選手などがいた。3番手グループとのタイム差、ラップを見た時に、一山選手以外の全選手、この3番手グループまで周回に出来る状況。実際、最終周に難なく周回に。あの鍋島選手も周回にしてしまった。結果は日本記録を28秒も上回る大記録で優勝、オリンピック代表内定獲得だ。

 この2レース、本当に鳥肌が立つ程のすごさを見せてくれた。オリンピックで海外の選手とどこまで戦えるか、本当に楽しみになってきた。2人のインタビューもしっかりした内容であったのも期待が膨らんで良かった。

 新谷選手は、単純にスーパーアスリートというだけではなく、女性アスリートの大きな問題、人間であり、女性であることを守る強い意志を持つことを発信し続けている。ジュニアアスリートの指導という立場からは、多くの間違った考えを持つ指導者が存在することを考えると、耳に痛い。古き良き指導者達は聞く耳持たない(持てない)だろうが、大きな問題提起をしてくれている。やはり、アスリートである前に人間であり、女性だと言うことは絶対に忘れてはいけないのだ。

 そして、新谷選手のインタビューでも再三名前が出た、横田コーチ。横田さん自身、長く日本中距離界、800mのトップに君臨し続けながら、現役時代から東京都高体連の強化コーチなども対応して頂き、多くの選手に影響を与えてくれていた。自身が無しえなかった、世界での勝利を教え子達が成し遂げる日が近いかもしれない。

 最終レース、男子10000mタイムレース決勝。日本記録を上回る参加標準記録を更に10秒上回る好記録で、相澤選手が優勝、オリンピック代表内定だ。男子も含めて、来年は風を起こしてくれる予感だ。

K値による感染ピークアウト宣言

 今日は、両極端な発表が為されている。

 吉村大阪府知事は事実上の緊急事態宣言を発出。しかし、地元大阪大学を中心とする『K値』推奨チームが、第三波の感染拡大は既にピークアウトしたと報告した。

 春の緊急事態宣言時、発出時点で既に感染はピークアウトしていた、従って、緊急事態宣言は何の意味もなかったと、『K値』での分析が示し、元大阪府知事橋下氏も問題提起していた。その総括、反省が必要と提言しながら、今回の吉村知事の宣言発出に橋下氏はどうコメントするのだろう。

 第三波の感染ピーク時期や収束などの予測を過去のデータから分析した結果を、11月23日に出稿した記事『新型コロナを正しく恐れよ』に示させて頂いた。そこでは、感染のピークは、12月初旬から中旬にピークと予測している。その想定の元、直近では丹念にK値ならぬT値を確認して、そろそろピーク、上げ止まり傾向が出てきていると読み取っていたが、K値推奨グループが先んじてピークアウトを宣言したのだ。

感染推移

 まずは、新規感染数の推移グラフを見て頂きたい。毎日、過去最高、曜日としては最高、等とメディアは危機を煽り続けているが、現実は上げ止まり状態にある。もちろん、減少している訳ではないが、明らかに上昇度合いは鈍っている。このことは数字を冷静に見れば疑い様がない。

K値

 次に、『K値』の推移をご覧頂きたい。確かに、曲線のトレンドが変わる変化点が発生している。この変化点を読み取れば、ピークアウトを迎えたと言えるのである。

T値

 次に、私の推奨するT値を示す。T値の詳細に関しては、拙著『ファクターXの正体』にて説明させて頂いているので、興味のある方はご覧いただければと思うが、同じく変化点の発生が確認できているが、本当の意味での下降トレンドに向かう臨界点である『1』よりはまだ若干上にあるので、様子を見ていたのが実態だった。

 確かに、この先別要因で再増加、という可能性がゼロとは言えないが、あくまで統計的にデータを読み取ればピークアウトを迎えトレンドが変化する状況にあることは、否定出来ないのである。

 私自身は、今週いっぱいから来週頭ぐらいの傾向を見て、と安全を見て、考えていたところ、K値グループがピークアウト宣言を先んじて発表した様だ。流石だ。今の状況で、なかなか勇気のある発表ではあるが、この発表の方が、多くの危機感を煽る根拠不明の情報よりも百倍信頼できる情報であり、科学的、統計的根拠があることを認識してもらいたい。

 そうすると、私の当初の予測は良い意味で若干外れた。それは、想定よりもピークアウトが若干早かったという事と、ピークの高さが想定よりかなり低く済んだという事だ。

 この先も、メディアや専門家は、まだいつ上がり始めるか分からない、増加していないとは言えない、など、数字を見ないで、根拠不明の話が今まで同様拡散されるだろうが、落ち着くべきだ。それらの声に動揺しなければ、マスコミはいずれ発言を控える様になる。国民の多数が冷静になれば視聴率の取れない扇動は出来なくなるからだ。

 そして、いい加減に気付いて欲しいのが、行動制限と感染の増減に何ら因果関係がないと言う事実に。専門家は、専門家故の常識に絡み取られ、どんなデータや事実が突き付けられても、とは言ってもと言って常識に縛られる。人の行動がウィルスを拡散させるのは常識かもしれないが、新型コロナは自然に広まり、自然に収束していく。まるで、旧型コロナウィルスが常在している様に、新型コロナも常在していて、自然条件や人の体調で感染周期を自然発生的に繰り返す。そんな傾向に見えて仕方がない。

 一部でGoToとの因果関係を示すエビデンスがないのは、データを取っていないからだという言いがかりも聞こえてくる。しかし、統計データとは、マクロなデータであり、マクロデータなら日々積み重ねたデータが存在する。だから第3波がピークアウトしたという分析も可能になるのだ。

 そうこうしているうちに、専門家の意地だろうか、自分たちの常識を裏付けるためのデータを出してきた。それは、若者の移動が多く、そして若者の移動が感染拡大に繋がっているというデータだ。しかし、少し冷静に見て欲しい。分母と分子を見て、年齢別の割合を正確に計算したわけではないが、有意差がある様には見えないのである。印象操作的に語って、統計的には語れていない様に見える。更に、あくまでミクロ視点のデータに過ぎず、ミクロ視点では数々の反証データも存在するので、一部のつまみ食いで語るべきではなく、マクロ的に移動と感染に相関関係が無い事実を覆せるものではない。

米国大統領選挙という権力抗争

 トランプ大統領の敗北宣言が為されず、未だ混沌とする米国大統領選挙だが、ニュースは相変わらず真実を伝えるのではなく、印象操作のフェークニュースに終始し、トランプ氏のダーティーで往生際が悪いという印象を発信し続けている。司法長官は、『重大な選挙不正の証拠なし』と発信したが、各種メディアは、あたかもトランプ氏の主張が言いがかりで不正はなかったと言わんばかりの裏付けとする報道に終始しており、聞きかじりの人は騙されてしまうだろう。では、この言葉の意味するところは何か冷静に考えて見よう。

 まず『重大な』であるがこれは、結果を覆すか否かが判断基準で、確認できている不正を合計しても結果が覆らない規模であることを意味する。例えば票差が1000票あったとして、不正が確認されたのが200票であれば、結果は覆らないということだ。
 そして『証拠なし』と言っているのは、証拠が確認できていないだけで、不正がなかったとは一言も言っていない。そもそも、証拠を押さえて確認する捜査が行われているかというと甚だ疑問であり、捜査していなければ証拠が確認出来ないのは当然である。
 原告側がいくら訴えても、原告側が掴める証拠など氷山の一角に過ぎず、本格的操作が大々的に行われない限り、覆す証拠は出るはずがないのだ。

 冷静に考えて欲しい。こういう話を客観的に事実検証する際の思考方法は、逆の立場で考えてみる事だ。トランプ陣営の不正が指摘され、一部、それ程大きな規模でなくとも発覚した場合を想定するのである。恐らく、メディアはこぞって、トランプ批判に徹底するだろう、発覚しているのは氷山の一角であり、一部でも不正が発覚したのであれば、選ばれる資格は無いと。

 えー、だったら不正で選ばれたバイデンは、大統領としては認められないじゃあないか、というのも間違いで、極論言えば、どんな不正をしようが、結果の選挙人獲得数で上回れば勝ちなのである。綺麗ごとではない、権力闘争、昔なら殺し合いなのだから。法的にも、立証できる不正で逆転できない時点で、現代の権力闘争では、それが結果であり、決定となる。

 事実として、数々の不正は立証されている。死者や不在者の名義での投票があったり、投票数が有権者数を上回っていたり、明らかな不正だが、結果を覆す規模ではないだけなのである。私が以前出稿した原稿でも、統計的な根拠と推論を書かせて頂いたが、ほぼ間違いなく、郵便投票が無ければトランプ氏が圧勝していたと推定できる。しかし、郵便投票なるものの実施を防げなかった時点で、この選挙、いや権力闘争の勝敗は決したのである。共和党陣営としては、極論を云うと、リアルの投票で有権者総数の過半数を獲得しない限り勝てないのだ。いや、ひょっとすると過半数を超えても、何故かそれ以上の郵便投票が作り出されるかもしれない。

 そもそも、郵便投票を大規模実施させた時点で、民主党の勝利なのだが、今回は新型コロナ感染抑止を口実に導入を阻止できなかった。しかし、この勝ち方が出来るのなら、あの手この手を使って、郵便投票の制度定着化が叫ばれるだろう、尤もらしい理由を付けて。投票率が格段に向上できたことを成果とするなど、民巣主義として進化出来る方法だとか、何とでも理由は付けられる。

 従って、4年後の大統領選挙、権力闘争は既に始まっており、トランプ氏のうったえは、その入り口に過ぎない。早ければ、来週早々にも4年後に向けての宣戦布告が発信されるのではないだろうか。敗北宣言ではない、次への宣戦布告として。

日本は、他国の出来事と達観するのではなく、そのことを前提に、自国の進む道、戦略を見極め、戦術を立てることを考えるべきだ。次期米国大統領は、日本人の感覚における、民主主義に則った、公平な投票制度で選ばれた政権ではないことだけは間違いなく、目的のために手段を択ばない政権を相手にすることになる。しかし、世界では、民主主義的に選ばれた為政者の方が少ないとも言えるのであり、綺麗ごとでなくその現実を前提とするべきだ。尤もらしく、メディアも使って、法的にも外堀を埋めてくる相手と、それでも同盟国として振舞いながら水面下での攻防は熾烈になる。それは国家レベルだけでなく、民間も含めてだろう。そして、一般国民も、米国メディアの発信がどれだけ偏向しているか、という現実を認識して鵜呑みしない、同時に、米国メディアをニュースソースとして発信する国内メディアも同様であり、鵜呑みせず、自らの頭で考える必要性が高まってきた、そういう時代なのだ。

悪魔の証明

 GoToキャンペーンが感染拡大の原因となるエビデンスは無い。このことは、多くの専門家もメディアも認めている。当たり前だろう、数字は嘘をつかない、GoToを始めても第2波という感染拡大は減少に向かったからだ。素直に、人の移動があっても、適切な感染防止行動、ニューノーマルの生活様式が備われば、感染拡大抑止には繋がらないと言っても良いだろう。

 しかし、良く聞こえてくるのが、『GoToが感染拡大の原因となっていないエビデンスも無い』という言い方だ。国会では野党が政府の新型コロナ対策の追及の場で、医療の専門家はあらゆる情報発信ルートを使って、メディアは無責任なコメンテイターやアナウンサーまで、同じ口調で、どちらともいえないと印象を植え付け続けている。
あまり意識されない方も多く、騙されがちだが、この言い方は『悪魔の証明』という禁じ手である。

 この世に悪魔は存在しないと主張するならば、それを証明して見せろというものだ。存在することを証明する為には、1人でも悪魔を発見すれば存在を証明は出来るが、存在しない証明は、その時点で発見されていなくても証明にはならないのだ。たまたま、発見できていないだけかもしれないからだ。従って、永遠に証明は出来ないのだ。別名、消極的事実の証明ともいう。

 従って、『GoToキャンペーンが感染拡大の原因となるエビデンスは無い』という時点で、統計的にも科学的にも因果関係は無いと言うべきなのである。もちろん、何らかの相関関係を示すデータが確認されれば、そのデータを検証して、結論が覆る可能性がゼロという訳ではない。しかし、エビデンスはない時点で科学者なら、『きかっけになったのは間違いない』『原因となっていないエビデンスも無い』とは絶対に言えないのだ。

 メディアも事実を伝える大原則が、もし、今でもあるのなら、この『悪魔の証明』は直ぐに訂正するべきだ。軽々しく発言している方々も、電波に乗せる責任を持って謝罪と訂正が必要だろう。

 国会の野党議員に関してだが、冷静に判断できる有権者を増やさないと、民主主義を崩壊させかねない。政権を攻撃するのが野党の役割だと、非論理的な言いがかりばかりで『悪魔の証明』を殊更求める傾向が強い様ではダメなのだ。論理性の無い攻撃は、野党だから結果に責任を持つ必要が無いと割り切っているから出来るのかもしれない。それでは、決して与党に押し上げようと思えなくなるだけであり、永遠の野党、永遠の無責任集団でしかなく、健全な民主主義には必要ない集団になってしまう。日本の為にも健全な議論を期待したいし、そうでないなら投票行動で示すべきだろう。

 悪魔なんて存在するはずが無いのは、常識だ。それと同じ論理で、人が動けばウィルスも動き、感染が拡大するのは常識だと言いたいのだろう。しかし、日本のニューノーマルの生活様式、感染抑止行動が伴えば、移動のリスクは充分低減され受容可能なレベルになるのだ。常識は、覆るものであり、ある条件を掛け合わせることで覆せるものなのだ。そして、このことは日本が諸外国に胸を張って誇るべき事象なのだ。

 では、なぜ今、感染拡大しているのだろうか。その問いには、なぜ昨年までのインフルエンザはこの時期に感染拡大が始まっているのだろうかと問いたい。また、風邪は何故冬に流行し、夏風邪も一定数発生するのかと問いたい。問いに対して、必ず1対1の解が存在するわけではないのが実社会。しかし、季節性の要因があることは間違いないのだ。つまり、気候を人為的に操作出来ない領域であり、冬季のリスクは、当初から認識するべきリスクなのだ。

 また、逆の言い方をすると、因果関係のないGoToを停止したところで、或いは営業時間短縮要請をしたところで、感染抑止効果は無いと言っても過言ではない。効果のない策を打つことで、被害を受ける観光業界、各種店舗は補償されたところで、必要のない被害を受ける事に違いは無いのだ。いくら補償があっても、事業継続とは全く次元が異なるのだ。これほどバランスの悪い策に対して、政府が消極的なのは当たり前で、経済か感染対策かという言い方や経済優先という解釈は本質的に間違っている。間違ったメッセージに踊らされる国民の声が民主主義社会では諸悪の根源となってしまうのであり、間違っていることは間違っていると是々非々の考察が必要不可欠だ。

 そうこうしているうちに、『GoToを推進することで国民の緩みに繋がるリスクがある』という言い方に専門家の一部は変わってきた。『悪魔の証明』に気付いて反省したのであろう。しかし、ならば打つ手は、GoTo停止ではなく、ニューノーマル、感染予防対策の徹底の訴えかけであり、法的措置が必要ならば、感染抑止対策の不備に対して行政指導、罰則規定を設けるなどが有効である。条件として、感染発生の有無に関わらず、あくまで対策の内容を評価するべきではあるが。
 そして、何と言っても医療体制の強化が一番重要な対策だろう。医療崩壊を防ぐ具体的な方法論、税金を使ってでも実効性のある対応策を提言するのが分科会、医療専門家の役割ではないのだろうか。ベッドが不足する、人が足りないとテレビで不安を煽って、政府が何もしてくれないと言っても何も前に向いて動かない。具体的に何をするべきか、論理的な発信を期待して止まない。