ワクチン接種の是非について、各所からお問い合わせを受ける機会が増えている。ここまで明確な見解を避けてきたのは、余りにも判断基準とするデータや情報が少ない事による。しかし、いつまでも判断を避けられないので、現時点での情報を元に検討をしてみた。
マスコミがワクチンに関して発信する情報は、極めて偏向しており、知りたい情報、知るべき情報が殆ど発信されていない。ワクチンのデメリット面で発進され続けているのは、痛みだとか発熱程度の副反応とアナフェラキシーまでで所詮一時的なものばかりで、何故か本質的な問題に踏み込んでいない。
一般的に判断はメリットとデメリットを天秤にかけて評価する必要がある。まず、接種する事で得られるメリットに関して考察する。
<ワクチン接種によるメリット面>
メリットは、何と言っても感染抑止、感染した場合の重症化抑止、その結果としての致死率低下である。現在日本で承認されている、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカの3種だが、現在確認されている変異種に対しても、充分な効果が期待できる。一番低いアストラゼネカでも70%以上、他では90%以上というインフルエンザワクチンよりも高い効果が見込めるのだ。
但し、中和抗体が生成されると言う観点で前述の効果は語られているが、それで充分なのかと言う疑問は感じる。筆者は、その疑問を解消する文献や論文等に辿り着いておらず、現時点では効果は高いと考えている。
次のメリットは、集団免疫に近付く事だろう。間違ってはいけないのが、集団免疫を獲得したからと言って、新型コロナが消えてなくなる訳ではない。寧ろ逆で、常在化する状況だろう。つまり、普通の風邪と同じ様に、自然免役が弱った時に感染、発症し、数日で快癒する様になる。社会として、この状態になる事は大きなメリットであり、新型コロナを凌駕した、まさにWithコロナが実現できるので、集団免疫獲得は大きなメリットである。
最後に社会活動のパスポート化する事だろう。ワクチン接種証明を社会活動の認証に使う動きが海外で始まっている。日本でも間違いなく同調圧力により、同様の状況になるだろう。つまり、接種していないと、満足な社会活動に支障を来たすのだ。
筆者はこの社会構造に関しては問題意識を強く持っているが、だからと言って回避する事は難しいと考えている。拙著『ファクターXの正体Ⅱ』でPCR検査陰性証明書に関して問題性を語ったが、同様に、海外の場合特に、聖書一神教宗教圏の行動規範として、是か非か、契約で明確にする事で行動判断をする傾向がある。その悪影響で、PCR偽陰性の軽症状者が感染を拡大させ爆発的な感染をもたらしたと仮説した。そこに論理性は無くとも、文化の基盤を覆す事は困難である。ワクチンパスポートも同様だろう。これを持っていないと活動を是としない、契約の免罪符になる。日本では、社会的にそこまでは要求されないとしても、大なり小なり、個々人の活動内容によっては、持っていないと活動できない事も考えられるだろう。
<ワクチン接種によるデメリット面>
次に接種する事によるデメリットに関して論じる。
最大のデメリットは副反応、健康被害の可能性だろう。それも報道されている痛みや数日で解消する発熱、倦怠感ではなく、重篤な健康被害だろう。実は、この情報をメディアでは殆ど取り扱っていない。アメリカ、イギリスなどの報告を見る限り、凡そ100万回あたり18人から19人の死亡者が発生している。アストラゼネカの場合、100万人中2~16人で血栓症が発生しているとも報告されている。但し、ワクチン接種との因果関係が証明されている訳ではない。
また、ニューヨークタイムズが報じた情報によると、ファイザーなどのmRNAワクチン接種後の若年層から心筋炎が発生しているとの事だが、例年の同症発生頻度と大きく変わらず、関係性は見い出せていない。
では、日本ではどうなのだろうか。以下の表が、厚生労働省が公表している、ワクチン接種後死亡者(~2021.5.7)のリストから抽出して作成したものだ。
既に、39人の死亡が確認されているが、対象と筆者が付け加えた欄は、流石に溺死や誤嚥性肺炎はワクチンと因果関係は無いだろうと素人考えでも判断できる事案に×を付けさせて頂いた。その8人を除けば31人になる。
表を見れば分かるが、高齢者の死亡者が多く見えるが、これは対象の母数分布による可能性を考慮すると一概に評価は難しい。4月末までの総接種回数(厚労省及び首相官邸ページから取得)がおよそ400万回弱なので、100万回あたりの死亡は、10人前後と計算出来て、アメリカ、イギリスのデータと同等かそれ以下である事が分かる。
勿論ここまでのデータは、まだまだ接種初期の段階のデータに過ぎないが、接種の進む他国と比較してもそれ程異なる結果が出ている訳ではない事は言えるだろう。
また、この死者数は因果関係が明確ではないという問題はあるが、日本のコロナ死者数のカウント方法も同様に、陽性者の死者数をカウントしており、直接の死因に言及していないので、この数と比較してリスクを評価しても大きな間違いでは無いだろうと言う前提で比較評価する。
下表は、5月19日時点の年齢別死亡者数情報と人口統計の情報を元に作成した。
一番右の欄が、人口に対する死者の割合である。あくまで現時点での数字を示しており、今後増える事も考えなければならないだろうが、マクロ的にはこの数字でも参考になる。明らかに60台以上の年齢ではワクチンのリスクを上回る数字である。
一方で、日本の40台以下の層で、果たしてデメリットをメリットが上回るのだろうかと言う疑問がある。変異種で変化する可能性もあるが、可能性を言い始めるとキリが無い。現時点の変異種は、確かに大阪はリスク増に思えるが、拡大している他地区、特に東京では、今までと大きな変化が確認できないのだ。
誤解が生じ易いので繰り返すが、ワクチン接種後の死亡事案は、直接の関係性は示されておらず、例えワクチンを接種してなくても全く関係なく死亡していた事案かもしれない。恐らく、その可能性の方が高いだろう。しかし、一方でコロナ死者数のカウントも同様のカウントをしており、直接死因となる死者数ではないので、比較評価も可能と考える。正確な評価には、双方直接の原因となる数字に是正するべきだが、それは叶わないだろう。
G7先進諸国の場合、このコロナ死者数は桁が違う多さなので、デメリットが少々大きくても、ワクチンが救世主、ゲームチェンジャーになるのであり、日本が同じ評価を妄信するのは間違いで、状況に応じた判断を冷静に行う必要があるだろう。
健康被害のデメリットはこれだけではない。ファイザーやモデルナの様なmRNAワクチンは今回が人類初の大規模トライアルである。元々、mRNAは不安定で実用化が出来なかったのであり、一定期間安定した状態を保つ技術が施されて実用化に至っている。この安定化させる処理の悪影響の懸念は一部専門家から聞こえてきており、その評価は10年単位でしか確認できないだろう。その未知のリスクも僅かかもしれないが存在する事は知っておく必要がある。薬害とはそういうものだ。
<総合判断>
ここまでの評価では、高齢者は、接種のメリットが一定レベルあるだろうことが数字で示せた。基礎疾患者も同様だろう。しかし、若年層でのメリットは個人のものと言うより、社会安定性面にあると結論できるだろう。接種のデメリットは、未知の健康被害に尽きるが、これは、未知が故、正しい評価はできないが、社会活動にはリスクが付き物だと考えるべきかもしれない。それよりも、接種しない場合の同調圧力による社会活動上の制限を自分自身の活動に照らし合わせてどう評価するかが、残念ながら最も考慮する必要がある様に思える。
<心配すべきは日本の非論理的な同調圧力>
今の日本の社会情勢は、政治も含めて、冷静に科学的合理性による判断が行われず、少し数字に基づいて実態を語ると、揚げ足を取った言葉狩りの私刑が執行される不健全な世の中になっている。自殺者増や超過死亡数の減少など総合的に多方面から事態の緊迫度合いを検討すべきだが、その様な声はほぼ聞こえてこないし、完全にスルーされている。
しかし、そういう人達程、アフターコロナ時においては、不公正な訴訟が発生したり、10年後に薬害が発生した時など、掌を返して感情的に逆上するのだろう。今、これだけの同調圧力で他を圧するのなら、合理的には、その結果のリスクは受容されたはずなのだが、非論理的な感情論は刹那的なのだ。
ワクチン接種も、表向きは自己責任であるし、本当に接種出来ない人も存在する。それでもその様な見極めも充分に行わず、社会的な同調圧力は極めて強くなるだろう。
ワクチン先進国の接種後感染が収まったとはいっても、緊急事態下の日本とほぼ同じ感染状況なのだ。それでも社会は活性化しつつある。つまり、日本がワクチン接種後、ほぼ同じ感染状況であった場合でも、騒がず、社会活性化に向かうメンタリティーを持てるのであれば、集団免疫に向けた全員接種は意味があるだろう。その為には、メディアが今までの様に朝から晩まで、感染拡大だ、医療逼迫だと危機を煽り続ける事を止める必要がある。
この様な数字の場合、どこまでも無条件に相関性を有する変化を示す訳ではない。感染抑止対策でも、どこかで下げ止まる様に、飽和と言う現象が必ず自然発生する。過去の統計予測による最悪の事態等が一つも実現しなかったのは、この飽和と言う現象を考慮していない単純計算しているからだ。その様に考えると、アメリカやイギリスのワクチン接種による感染抑止効果と同じ率を日本が出せるとは、筆者は思っていない。これはあくまで予測なので、外れる事を期待するが、ワクチン接種後、それ程感染が減少しない事もあり得る。万が一欧米と同じ様な率で感染が減少しなかった場合、日本の同調圧力は、どこに向かうのか、心配で仕方がない。