大阪市咲州メガソーラー入札に関しての考察2

日本国のインフラである発電事業に中国資本が参入し、一帯一路として公表されている事態になっている事は疑いようのない事実だ。この件に関して、地上波メディアは殆ど取り扱っていないが、ネット界隈では問題視する声が高まってきている。

そして、ここにきて情勢が変わってきたと思えるのが、維新の国会議員が橋下氏を民間人であり党との関わりを否定しつつ、擁護の声を上げ、違法性の無い事と、安全保障上の問題であれば法制度の問題であり、国家の問題であって、地方自治体に責任は無いとの論調を繰り広げている。同時に、この様な外資参入によるリスクに関しては、予てより同党としては、国会で提案を繰り返し、実現していないのは与党の責任だと言い始めた。

この論調には2重3重の論理破綻が存在し、この様な橋下氏の論調に合わせた上から目線の発信をするメリットがどこにあるのか勘ぐってしまうのは私だけだろうか?

<維新国会議員主張の欺瞞性>

ネット界隈での批判には当然幅があり、各論あるが、真っ当な視点で整理すると、今回の事案に対する違法性を問う批判は少ない。寧ろ、法の抜け道を行く脱法行為的な手法に対する批判が主であろう。そして同時に橋下氏の強弁の数々は前論考でも書いたが、入札云々やWTOの国際調達ルールなど本筋とは異なるその場の言論を支配する行為に終始し、次の瞬間、外為法など言い方を変えてきている事に批判が集中している。仮に当初の主張に誤りがあり、訂正し異なる主張をするのなら、明確に訂正してからにするのが一般的常識であり、それすら逸脱する行為が余りにも頻繁で批判されているのだ。

維新の国会議員は、この様な橋下氏の姿勢に対しても一切批判せず擁護している。

維新という組織にとって、橋下氏の姿勢に一般からの批判が集中し、関係性を疑われる状況でもあれば、自らにも火の粉が降りかかる危機状態である。橋下氏が全く関係ない人物なのであれば、本来の危機管理、危機コミュニケーションの観点で考えれば、寧ろ、この様な振る舞いに対して、批判して、自組織と関係なく、考えも全く異なる事を表明するべきだろう。

しかし関係性は否定しても、当人を擁護すれば、その一連の振る舞いすら批判の対象でなく、正当性のある行為であり容認するべきと宣言しているに等しく、同様の行為をする組織と認識されかねない。現に筆者には論調が同様に聞こえてくる。これでは、自らに降りかかる火の粉が燃え上がり、炎上に繋がるリスクが高まるのではないのか。

次に、維新自身は、安全保障上の脅威となりうる外国企業の参入については、実行力のある法規制を国会で提案してきたとの事なのだが、それが政党としての主張であれば、咲州メガソーラー事案において、入札当初と異なる事業体制に変更される時点で、前述の観点で確認するのが筋では無いのか。

全てを確認など出来ない、という説明も、一帯一路として高々と宣伝される程の一大プロジェクトであれば確認するべきと考える方が妥当ではないのだろうか。

例え、WTOルールや外為法などが妨げとなって、自身の政策方針上の対応措置が、法的に困難だとしても、その時点で広く大阪市民、いや国民に状況を公開し、立法措置の必要性を訴える絶好のチャンスでは無いのか。

当時、発表されたり、問題視された事実は確認できていない。

『違法性が無いから問題ない』と『自分達は法規制を提案してきた』を同時に説明する事で論理破綻しているのだ。法規制の必要性を提案しているなら、現行法規制に問題がある認識の筈で、違法性が無いから問題ないという言い訳は決して出て来ないのではないだろうか。行政の不作為か、問題認識が無いかのどちらかでしかないと考えるべきだろう。

<今後期待すべき本質的な対応>

この問題に対して、筆者は明確に問題を二つに分けて論じるべきだと思っている。

最優先すべきは、今現実の発生している事態を正確に把握し、安全保障上のリスクを低減する為に為すべき事を議論し、法制度化を目指す事。これは、橋下氏がどうとか、維新がどうとか、関係ない。

現に発生している危機事態に対して、政治が向き合わなければ話にならないのだ。参議院選挙の明確な争点の一つになり得るだろう。

次に、再発防止の観点で、こうなってしまった経緯を調査し、明らかにする事だろう。これも橋下氏や維新がどうという事ではなく、全国各地で発生している事案を一つ一つ、明らかにしていく事ではないだろうか。

本当は、維新の立場で、この視点で動く絶好のチャンスであったのだが、全く逆の反応、問題はないとして収束させる方向に向かってきたので、もう期待はするべきではないだろう。

本当は、まず大阪市議会で明らかにしていくべきなのだろうが、維新自体が『違法性が無いから問題ない』という主張をしている限り残念ながらあまり期待できないかもしれない。

そうなると、違法性も見えてこない状況でもあり、ジャーナリストの皆さんの腕の見せ所ではないだろうか。前述の様に地上波系メディアや新聞等のオールドメディアは期待できないかもしれないが、一部では取材は進みつつあるとも聞くので期待したいところだ。

この追及では、維新だけではなく、与党にも多くの親中派が関与している可能性も視野に入れるべきであり、港湾パートナーシップなども含めた深堀がどこまで出来るか、注目するべきであろう。

しかし若干心配なのが、公党である維新と一部メディアが包括連携協定を結んだということ。報道機関と公党の包括連携協定で、報道に偏りが発生しないのか、正直不思議でならない。一般的に考えると、手心が加わると考えるのが自然であろう。

様々なハードルは現実に存在するが、国として安全保障上の課題であることは間違いなく、国益視点での追求と対策の議論、実行を避けては通れないだろう。

大阪市咲州メガソーラー入札に関しての考察

時の人橋下徹氏が自身のYouTube番組newsBAR橋下2022/05/07にて、北村弁護士をゲストに、咲州メガソーラー開発事業に上海電力が入札で参入し、WTOルールで事業者の排除は出来ないと強弁を振るった。

これは、中国の国営企業と言っても過言でない同社が、この大阪での事業参入を皮切りに日本各地での同様の事業に参入し、エネルギー安全保障上の問題を指摘される状態に陥っている現実に対して、それを誘導したと疑惑が当時大阪市長である橋下徹氏に向けられ、説明責任を果たすべきだと北村弁護士が指摘したことに対するものだ。

説明は簡単に言うと、入札だから排除できない。WTOルールを知っているのかと無知を論う内容だった。

しかし、上海電力は入札によって事業参画した訳では無いのが事実なのだ。

<咲州メガソーラー関連入札とは>

本事案の入札で確認できるのは、咲州メガソーラーの発電用地の不動産賃借契約であり、その条件付き一般競争入札だけなのだ。それには伸和工業と日光エナジー開発の日本企業2社が落札している。550,001円/月で落札し、その10日後に伸和工業が合同会社咲洲メガソーラー大阪ひかりの泉プロジェクトを設立、この合同会社に出資の形で上海電力が実質的事業者になったのだ。

落札後、僅か10日間で会社設立、出資というのは事前準備が無ければ不可能だろう。つまり、実態を隠しての入札参加スキームの出来上がりなのだ。

入札されたのは不動産賃借契約だけであり、その地での開発事業、電力事業に関しては入札でも何でもないのが事実である。つまり、上海電力を参入させるスキーム自体は入札案件ではなく、橋下氏が主張するWTOルールなど全く関係ない。いやむしろ行政が関与しない野放しでの決定なのか、或いは、予め指定していた事業者を隠して誘致した疑いが生じているのだ。

上海電力のホームぺージに記載されている『この事業は大阪市により招致いただいた』というくだりを疑う向きもあるが、想像するにこれは翻訳ミスで、正確に意訳すると『この事業は大阪市の入札により参入した』としていいだろう。

従って、『招致』を行政が指名した様に解釈するのは間違いだろうが、発電事業は『入札』も実施されておらず、この説明は虚偽と言っても過言ではないのは間違いないだろう。

<山口敬之氏による公開質問>

ジャーナリストの山口敬之氏はこの疑いに対して、当時の大阪市長である橋下徹氏に公開質問をYouTubeにて実施した。以下がその質問内容である。

1.上海電力の参入が入札というなら、入札日時とその内容を明確にせよ

2.上海電力を発電事業に招致したのは大阪市の誰で、どのように招致したか

3.2013/9~2014/3の間、上海電力関係者に何回面会したか、その場で咲州電力開発事業の話をしたか

1.に関しては、入札であり事業者として拒絶できないとする橋下氏の論理が正当ならば、入札実施の事実関係を明らかにせよという事であり、事実入札していないだろうから、橋下氏の虚偽説明が明らかになるだろう。

2.『招致』という言葉が額面通りであればその実態を明確にできれば一大疑獄に発展するだろうし、もし『入札』が正しいと解釈するならば、①の質問と重なり、表立った入札には姿を見せない『ステルス入札(山口氏造語)』が疑われる。

3.実際に上海電力関係者とのつながりがあれば便宜を図り、全国展開のきっかけを作りスキームを完成させた一大疑獄になるだろう。

しかし注意しなければならないのは、違法性があるのかだろう。例え便宜を図ったとしても、金の流れがなければ疑獄には発展できない。入札案件でなく、事業者排除の論理も働かせられないと言う強弁も通るかもしれない。

これは当人の説明などは期待できないだろう。なぜなら表向き違法性が無いと言う強弁が通るだろうからだ。捜査で立件でもしない限りだ。

但し、北村弁護士とのやり取りでの、入札だから問題無いと言うのは現時点で虚偽説明であり、WTOルールを持ち出して煙に巻く方法も批判されて然るべきだろう。そして違法性が無くとも同義的に問うこともあるだろうが、その場合は当人と言うよりも、同氏を出演させる放送局、スポンサーが考えるべきだろうし、視聴者として局へ意見発信するべきだろう。

<もう一つの視点、エネルギー安全保障の観点>

橋下氏の言い逃れの強弁はどこまで行ってもその場の強弁に終始し、過去とのつながりのない矛盾だらけで実りの無い議論にもならない喧嘩にしかならないだろう。

しかし日本の国家として、エネルギー安全保障の観点で現在発生している状態をどの様に考え、どう対策を講じるかは、建設的な別議論が必要だ。それこそ当時の責任論は検察の捜査にでも任すとして、今目の前にある事実は目を背けられないからだ。

エネルギー自給自足の問題、有事の際に、敵国に我が国のエネルギーの喉元を抑えられた状態をどう考えるかだ。

特に維新は、参議院選挙に向けて、この点を明確に有権者に政策として示すべきではないだろうか。行政の不作為であろうと、陰ながらスキーム構築し実質的に誘致したのであろうとも、きっかけを作った大阪の責任政党として、このままメガソーラー事業を野放しして良いのか、野放し出来ないなら、どの様な法案、制度改正でこのリスクと向き合うのか、国政レベルの公約にするべきだろう。

筆者としては、国益観点で見れば、例え賠償金が発生するとしても、それは損切りしてでも契約破棄し、国内事業者に移管するべきではないだろうかと考える。

こういう事を一つ一つ、鉈を振るって行かない限り、経済安全保障、エネルギー安全保障等遠い夢の話に終わるだろう。