五輪テストマッチに対する批判は国益毀損行為である

札幌で五輪マラソンのテストマッチが開催され、沿道メッセージ等でも批判が殺到した。政治利用や国益棄損を目的としている意思を持った行動は仕方がないだろうが、危機と煽られ、脊髄反射的に踊らされている人達は目を覚まして欲しい。それは、いじめに加担する無自覚・無責任層と同じ、加害者でしかないからだ。そこには、反対する論理的理由も持たず、その事により、アスリート個人を苦しめ、日本に大きな国際的悪影響をもたらす事を理解して欲しい。

恐らくここまでで、脊髄反射的に反論、暴論が発生し、以降は全く聞く耳を持たない、読みもしない誹謗中傷が、ワンセンテンスで飛び交うかもしれないが、まずは、冷静になって読んでもらいたい。

まず、最初に語るべきは、五輪開催は日本の国際公約である事。そして、開催の是非を決める権限は日本になく、IOCにある。つまり、日本の勝手な理由で五輪開催準備を滞らせる事は、国際公約を守らない、信用できない国になる事に等しいのだ。従って、現段階では粛々と開催に向けて準備を進める責任が日本にはある。

勿論、国内事情的にも感染対策を万全に行い、万が一にもクラスターを発生させない事を前提で、実際の大会時のシミュレーションをしっかりこなし、成功させるための準備にあたる必要がある。

3回目の緊急事態宣言において、プロ野球やサッカーなど、無観客や一部中止も発生しているが、機構側はあくまで決定には従うものの、感染対策は1年間のノウハウの積み上げもあり、観客を入れての開催にも自信を持っており、抗議の姿勢も示している。実際、実績としても感染拡大には繋がっていない。海外のスポーツイベントに関しても同様のノウハウの積み上げがある。これは、論文が出されていなくても、科学的実証と呼べるものであり、中止する科学的、合理的理由は存在しないのだ。

更に、五輪開催まで2か月ある。今、緊急事態宣言下である事は、先の中止の理由として説得力に欠け、ましてや感染状況の数字的にも、ワクチン接種が進み収束してきている国と同レベルの状況に過ぎない。こんな状態で、医療崩壊と騒いでいると、諸外国から嘲笑され兼ねないのだ。

『2週間後にはニューヨークと同様の状態になっている』、『死者は42万人になる』等、脅され続けてきたが、これまで何一つ実現していない。今度は、変異株の猛威で、『従来の対策では全く効果が無い』と危機を煽っているが、そろそろ化けの皮が剥がれてきた。思えば、昨年の緊急事態宣言1回目も変異株であり、繰り返される自然現象だが、初めて発生した脅威の様に危機を煽っている。報道にある様に、人流はそれ程減少していないが、爆発的に感染拡大している訳ではなく、均衡状態、下降トレンド推移が実態だ。変異と淘汰は自然現象であり、イコール脅威ではない。

それよりも、準備を怠り、実際の大会開催時に問題を起こす方が余程問題が大きくなる。少なくともIOCが中止と決定するまでは、準備を怠らず、開催に向けて努力する義務があるのだ。

その準備の足を引っ張る行為は、即ち、国益棄損に繋がり兼ねない事を理解するべきだろう。

そして何より、主人公であるアスリートは悩み、傷付いている。国民世論が反対しているという報道は、少なからずアスリートの心を傷付けているのだ。彼らは、不用意な発言が出来ず、とは言え、自分の人生をかけた戦いに臨むべく準備を進めている。外野の雑音を無くし、静かに専念出来る環境を提供するのが、開催国としての責務だろう。

今回の緊急事態宣言において、政府は人流抑制を前面に押し出した。それは、1回目の宣言と同様である。しかし、人流は報道にある通り、1回目と同様の減少は起きていない。

この理由は筆者には明確に思える。報道や専門家が言う、気の緩みや、もう我慢できないと言うのとは少し違って、人流抑制による具体的効果、合理的な必要性の説明が無く(非科学的でエビデンスが無いので説明のしようがない)、納得性が無い事だと思っている。賢明な国民の多くは、感染抑止のノウハウを1年積み上げてきた。情報不足時には盲目的に従ったが、今では8割削減の必要性が無いと判断しているのだ。

日本人は、それ程馬鹿ではない。本当に人流抑制が必要だと信じていれば、補償はなくとも、苦労してでも自粛する。人流がそれ程減少していないのは、必要性の乏しさを察知しているからに他ならない。声として聞こえてこないのは、同調圧力で本音を言えないだけであり、世論調査と実際の行動に矛盾が生じているのだ。政治は、声に出せない多数の声に耳を傾けないと政策を誤ってしまうだろう。

それでも盲目的に危機感だけ抱き、正しい恐れ方が分からなくなっている層は、一定数存在する。その中の一部がボーカルマイノリティとして、声を上げ、攻撃的で過激になっているに過ぎない。正しい恐れ方が分からないという事は、正しく感染抑止行動が出来ないという事であり、感染拡大の最大の要因となる。

諸外国から嘲笑されない様に、自爆だけは避けたいものだ。