鳥肌が立つレース連発の陸上日本選手権

 12月4日金曜日、大阪のヤンマースタジアム長居で鳥肌の立つレースが連発した。

 女子5000m決勝レースでオリンピック参加標準記録をクリアしている田中希実、廣中璃梨佳は優勝すれば即オリンピック代表内定。タイム的にはクリアしているが、除外期間(新型コロナの為公平性を保つ処置で2020年4月6日から11月30日が対象除外)の記録の為クリアしていないが実力はある萩谷楓の戦いと予測されていた。
 その中でも、先日の中距離レースにて、積水化学卜部さんに圧勝、800m、1500mで日本新記録の田中希実選手がどんな強いレースを見せるか、先日の実業団駅伝で1区独走の区間賞をマークした廣中璃梨佳選手がどこまで食い下がるか、楽しみなレースだった。

 序盤2000mまではスローで展開したが、そこから廣中選手がペースアップ、1周72秒を切るペース、3人の勝負に絞られ、3000m過ぎで2人に絞られる展開。後半更に切り替え、ラスト1周の鐘が鳴っても先頭廣中選手、直後の田中選手は変わらず、ラップは67秒の声。凄まじいペースでバックストレート直線に入り、田中選手が廣中選手を交わす。第3コーナーから突き放し、田中選手が強いレース、負けないレースを見せてくれた。中距離種目でスピード強化を行った成果がラストで活きた結果だろう。

 次に女子10000m決勝。新谷選手がオリンピック代表と共に日本記録に挑む。序盤、積水化学の佐藤選手がペースを作る展開。リズムに乗った新谷選手がそこから、1周71秒とキロ3分を切るペースに上げる。マラソン代表の一山選手が途中まで追走するが、直ぐに新谷選手の一人旅に。流石にキロ3分切りのペースは継続できなかったが、1周73~74秒までで踏ん張り通す。5000m手前で既に周回し始める。日本選手権に出場する選手を半分手前で周回するなどトンデモナイことだ。7000m過ぎのあたりで少し足が鈍った様にも一瞬見えたが、周回遅れの集団をバックストレートで抜かす際に、上手くペースを上げリズムを立て直した様子。2番手は、一山選手、3番手グループに日本郵政の鍋島選手や序盤引っ張った佐藤選手などがいた。3番手グループとのタイム差、ラップを見た時に、一山選手以外の全選手、この3番手グループまで周回に出来る状況。実際、最終周に難なく周回に。あの鍋島選手も周回にしてしまった。結果は日本記録を28秒も上回る大記録で優勝、オリンピック代表内定獲得だ。

 この2レース、本当に鳥肌が立つ程のすごさを見せてくれた。オリンピックで海外の選手とどこまで戦えるか、本当に楽しみになってきた。2人のインタビューもしっかりした内容であったのも期待が膨らんで良かった。

 新谷選手は、単純にスーパーアスリートというだけではなく、女性アスリートの大きな問題、人間であり、女性であることを守る強い意志を持つことを発信し続けている。ジュニアアスリートの指導という立場からは、多くの間違った考えを持つ指導者が存在することを考えると、耳に痛い。古き良き指導者達は聞く耳持たない(持てない)だろうが、大きな問題提起をしてくれている。やはり、アスリートである前に人間であり、女性だと言うことは絶対に忘れてはいけないのだ。

 そして、新谷選手のインタビューでも再三名前が出た、横田コーチ。横田さん自身、長く日本中距離界、800mのトップに君臨し続けながら、現役時代から東京都高体連の強化コーチなども対応して頂き、多くの選手に影響を与えてくれていた。自身が無しえなかった、世界での勝利を教え子達が成し遂げる日が近いかもしれない。

 最終レース、男子10000mタイムレース決勝。日本記録を上回る参加標準記録を更に10秒上回る好記録で、相澤選手が優勝、オリンピック代表内定だ。男子も含めて、来年は風を起こしてくれる予感だ。